ホンダと日産の合併
昨年末(2024年12月23日)に唐突にホンダと日産の統合話が発表されました。
1966年に スカイラインGT や グロリア 等の名車を生んだ「 プリンス自動車 」を救済合併のような形で統合したのが日産自動車です。
サニー とカローラ という日産対トヨタの技術競争や市場覇権の競争を繰り広げて、日本の自動車産業を盛り上げてきた一翼が日産でした。トヨタの品質管理と80点主義という一見穏健に見える製造方針に比較して、技術の日産と謳って乗用車用のL型6気筒SOHCエンジンにDOHCヘッドとソレックスのツインキャブを載せ高性能化し、軽量のスカイラインのバルクヘッドから前を延長して本来の4気筒のシャシーに無理やり6気筒を載せ、ホモロゲーションを取ってフジスピードウェイで常勝ポルシェを追いかけ回して勝利をもぎ取ったのは日本の自動車の歴史の金字塔の一つです。生沢徹等の有名ドライバーを世に知らしめたのもこのスカイラインです。
世界の名車の一つ、トヨタ2000GT が発表され、「ショーン・コネリー」とボンドガールの「浜美枝」の視覚的コントラストが大反響を呼びました。そうそう、この車によってヤマハ発動機のエンジンサプライヤーとしての地位が知られるようになり、その後の2T-Gや4T-G型のエンジンのサプライヤーにもなりました。
それに対抗して日産が送り出してきたのは「フェアレディZ 」です。それまでのフェアレディー はイギリスのMGタイプの上品な2座オープンカーで、今でも整備して乗っておられる方もいらっしゃいます。希少車です。対してフェアディZはロングノーズ・ショートデッキというスポーツカーの王道を行くスタイルの車で、日本では主に2000CCでしたがアメリカなどでは2400CCや2800CCのハイパフォーマンスカーで「ジー(Z)カー」と呼ばれて超人気車でした。今のZも同じコンセプトですが、これは変えられないというところでしょう。
1960年代にレース専用車として、トヨタ7 とニッサン(プリンス)R380 の死闘とかも強い印象が残っています。とにかく、トヨタにだけは負けられないと頑張っていたのが日産自動車です。
そんなこんなんで矢沢永吉さんや木村拓哉さんがコマーシャルにも出てきて、ゴーンショックのあともそこそこうまく動いているんだろうと思っていたのに、唐突に超自前主義のホンダと経営統合するという話でびっくりしました。本田宗一郎さんの、考えて工夫して諦めずに勉強して作り上げていく、という精神と他社との統合とは相容れない気がします。
日本のメーカーで海外メーカーと技術交流をせずにすべて自前開発でやって来たのは、トヨタとホンダだけです。トヨタも80点主義とか揶揄されていましたが、実は先の2000GTとかスープラ(セリカ)でのWRC参戦とかクラウンにはエアサスとかEFI(電子制御燃料噴射装置)など、その当時の最新技術を押し込むというような、チャレンジャブルなメーカーなのはご存知でしょうね。新進の光岡自動車の「大蛇」にパワートレーン一式を提供したのもトヨタですし、イギリスのロータスにパワートレーンを提供しているのも、ドイツのBMWにエンジンやシャシーを供給したりFCEV技術を供与しているのもトヨタです。チューニングも自由自在で、GR(GAZOO Racing)が元気なのも当然、有名なモリゾウさん(豊田章男会長)のハイパフォーマンス好きの要望にもすぐに答えられる技術力を培ってきています。
さて、好き勝手に書いていますが、技術の内製が基本のホンダと、息も絶え絶えで持てる技術力を活かせない日産の統合はどうなることでしょう。デザイン一つとってもなかなか難しそうです。フランス風の日産、アメリカンマッチョ風なホンダ。これに、ハイパフォーマンスカーに対しての技術力はピカイチの三菱が加わって何ができてくるか、楽しみなような気もします。日産のe-Powerというハイブリッド車がありますが、名前は先進的ですが内容は一般的なシリーズタイプのハイブリッドシステムです。トヨタのハイブリッドシステム「THSⅡ」に比較して高速域での燃費が上げられず苦戦しています。ポルシェのEVのように二段ギアを挟んでモーターの回転数を抑えるとかすれば多少はマシになりそうですが、開発リソースが足りなくて間に合わなかったそうです。高い技術力を持ち、GT-Rの様な世界一のスーパーカーもラインアップも持っているのに非常に残念です。
さて、今後の二社の動向予想ですが、フランス政府に事実上牛耳られているルノー(日産の元親会社のようなもの)との交渉とか、ホンダが求めている9000人規模のリストラとか、本当に実現できるのか心配です。ゴーンさんがネットで無責任な事を言ってましたが、なんとなく一理あるような気がするのも悔しいです。
今は、「やっちゃえ日産」じゃなくて「がんばれ日産!」です。何が何でも日産の技術を守り、国内のメーカーにとどまれるように頑張って欲しいです。