昔取った杵柄
技術部長です。
私事ですが、今年、子供が新中学生となりました。しかし、ご存知のように新型コロナウィルス感染拡大防止ということで、新学期から休校状態が続き、学校が始まったのは6月半ばからとなりました。
さて、中学生となって、勉強で躓きやすいのが英語と数学です。英語については、今は小学校から英語の授業があるので、まったく初めて触れるわけではありません。ところが、数学は算数とは違うのですが、なまじ算数ができていると数学もおなじようにやろうとして躓きやすいものです。
そこで中学校が休校になっている間に、少し数学を教えておこうかと思いました。わたしは、学生時代に塾の先生のバイトをしていて中学の数学と理科を担当していました。昔取った杵柄というわけです。
塾で教えているときにも感じていたのですが、「正負の数」と「文字式」は、最初は簡単に感じるのですが、いつのまにかわからなくなっているという厄介な性質を持っています。それで、学校が始まる前に予習をしておけば、つまずきも少ないだろうと思ったわけです。
本屋に行って教科書ガイドと問題集を買ってきて、準備を始めました。また、子供から教科書を借りて内容の確認をしてみました。数学の教科書の目次をみてみると、「正負の数」「文字式」「方程式」と続いてます。これは、昔とあまり変わりはありませんでした。
しかし、その教え方や取り上げる項目が大きく変わっていて驚きました。私が教えていた時とは、まったく違っていました。数学の目的が変わったのだろうかと思うくらい、導入部が違います。
最初に正負の数です。負の数の説明から始まるのはおなじで、温度や高さを例に書かれています。これについては、子供もすでに経験しているのでそれほど抵抗なく受け入れることができます。次に出てきたのが時差の話です。例えば、「ニューヨークで6月10日午後6時から開催される大リーグの試合中継を東京で見るには、(日本時間の)何月何日の何時にテレビをつければよいか?」といったものです。東経と西経の話と日付変更線の話と標準時からの時差を説明しなければなりません。確かに正負の数がわかっていれば簡単に計算できますが、導入でこれはさすがに難しすぎる例ではないかとおもいました。これは、学校では飛ばしたようです・・わたしも飛ばしました。正負の数の計算練習に時間を割きたかったからです。特に-×-が+になるあたりは、納得しにくいところです。とは言え、なんとか納得してもらって計算はできるようになってくれました。
文字式にはいってさらに愕然としました。「文字を使うと便利」であることの説明がずいぶんと続きます。そんなことは、そのうち嫌でもわかるとおもうのですが、どうも今はちがうようです。例えば、「ストローで正方形を作るとき、正方形の数と必要なストローの数の関係を表形式で書きだして、そこから関係を表す文字式を作れ」といった問題です。算数的ですね。数のとらえ方でいくつかの種類の式を作ることができます。もちろん、変形すればすべておなじ関係式になります。が、「文字式の計算」をまだ習っていないので変形はできません。違う式のようにみえます。こういう「問い」に答えながら、文字式の便利さを実感するのが目的のようです。その流れに沿って少し説明しましたが、結局は、「我を信じよ。文字式は便利である。」という形になってしまいました。
私は根っからの理系で数学にもそれほど苦労した経験はありません。もちろん、計算間違いは数限りなくしてきましたし、解けなかった問題もたくさんありましたが、それでも「数学がわからない」と感じたことはありませんでした。
もし、今のように数学を教えられていたら、中学1年の時に、果たして「数学がわかる」と感じることができたかどうか不安になります。
幸い、子供は今のところ「数学がわからない」とは感じていないようです。「間違えるのはあたりまえで、わからないのとは違う」ということを理解してもらえたらと思ってます。
昔の塾の経験で数学を教え始めたわけですが、昔取った杵柄は(案外)重たかったというお話でした。