バックロードホーン組み立て(5)
いよいよ今回は20cmバックロードホーンキャビネットの塗装です。前回、小型のキャビネットでテスト塗りをしていますのでその時の手順に沿って作業を進めてゆきました。
- スピーカー取付部の養生用の新聞紙を取替えて細かい塗料や削りかすが空気室に入りにくくします。同時に裏に出ている端子にも養生をして塗料がつかないようにする。
- まず電動サンダーに#60のペーパーをつけて底以外全面を研きます(今回は裏板も塗装する)。相当な面積があるのでゆっくり慌てずに研磨します。
- ホーン開口部は実験用のバックロードホーンでは小さくて手が入りにくかったですが、今回は大きいので十分手が入りました。ただ、電動サンダーでは作業がしにくいのでハンドサンダーにペーパーを取り付けて研き、直角な合わせ面などは小さな木片にペーパーを巻いて人力で研磨します。
- この研磨のときに掌や指先で表面の凸凹や直角に接着した部分のズレなどを見つけ、木工パテを使って補修、研磨によって削って補修、等を行います。最後に掌で撫ぜながら仕上がりを確認します。変な引っかかりや表面の滑らかさの差が無いようにします。ツルツルにするわけではなくて塗装下地をきっちり作るためです。
- 次は「サンディングシーラー」を塗ってゆきます。一回目は少し水を足して薄めて(粘度を下げて)から幅広の刷毛で塗ります。一回目はMDF板が吸い込みますので目視がしにくい部分があって、塗り漏れが起きやすいようです。乾いた後一旦研磨しますので、とにかく大量に塗り漏れがないように塗ってゆきます。ホーン開口部やスピーカー下部の凹み部分なども忘れずに塗ってゆきます。
- 数時間乾燥させた後、電動サンダーに#120のペーパーをつけて表面を研磨してゆきます。細かい粉が一杯飛びますが、めげずにがんばります。ホーン開口部も電動サンダーとハンドサンダーと木片+ペーパーを使って丁寧に、丁寧に磨いてゆきます。多分、この段階での表面の仕上がりで後の塗装の仕上がりが決まってくると思います。仕上がり具合のチェックは掌センサーです。
- 研き終わったら、今度はサンディングシーラーを原液のまま刷毛塗りしてゆきます。できるだけ刷毛目が残らないように適度なスピードで一定方向に刷毛を動かして塗ります。昔習った習字のように刷毛にたっぷりつけて一気に塗るっていうのがコツでしょうか。
- 晴天で乾燥注意報が出ている気候で二時間程度乾燥させました。もう表面はピカピカしています。電動サンダーとハンドサンダーと木片に、#180のペーパーをつけて磨いてゆきます。今回は下地をきっちり残してゆかないといけないので掌センサーを駆使しながら表面が平らに成るようにしてゆきます。言葉での説明は難しいですが、やってみればわかるかなと思います。
- この状態で#320のペーパーを使って同じように研磨をして仕上げます。実験用のキャビネットのときと同じようにこのままでもいいかなってちょっと思ってしまうほどの仕上がりになりました。
- ここからは前回の実験用キャビネットと同様に水性塗料の黒を刷毛で塗ってゆきました。最初は10%程度水を混ぜて幅広の刷毛で塗ってゆきます。実験のときはローラーで塗りましたが仕上がりが凸凹した感じになったので今回は刷毛塗りにしました。夕方になってしまったので屋内に入れ、一晩乾燥です。
- 翌朝、塗面を#320のペーパーで磨いてゆきます。できるだけ平滑に成るように研きます。ホーン開口部は面倒ですが、ハンドサンダーと木片+ペーパーで丁寧に研きます。
- 次に昨日と同じような天候のもと、10%の水を加えた塗料を刷毛で塗っては研磨を3回繰り返して合計4回塗りになりました。
- 塗面を#400のペーパーをハンドサンダーにつけて、ごくごく軽く研きます。ホーン開口部などで塗りにくい部分は手で軽く軽く研きます。
- 写真では分かりにくいですが、前面スピーカーの下にスロートを形成するために凹みがあり、凹みの下にホーン上側の板がせり出しています。この部分にアクセントとして赤のスプレーでラインを入れます。板厚が15mmなので15mmのラインです。赤のスプレーを使ったので塗る前にしっかり養生して塗面を水平に成るようにキャビネットの角度を調子し、一回で済ませるために垂れない程度に厚塗りをして一回で済ませます。
- 最後水性のクリヤースプレーを3回吹きました。特に研磨することもせずに吹き付けたのですが、あまりきれいにはなりませんでした。頭の中のシュミレーションでは多少ピカピカするかと思ったのですが、もっと大量に塗らないといけないようです。今回はキャビネット2本でスプレー3本だったのですが、もっといるかもしれません。水性というのがいけなかったのかも。
- スピーカ取り付けビスの穴を明け、後のスピーカー取り付け端子も後板にネジでとめる。
ということで完璧な仕上がりとは行きませんが、そばによらなければブラックに赤ラインという「ゴルフGTI」ばりのデザインです。夜目遠目というとおり、音楽を聞く環境下では十分な仕上がりでしょう。
バックロードホーンはエージングに時間がかかるのですが、今日現在ほぼ50時間程度聞いています。自宅周りが田舎で音量もある程度自由に成るので、できるだけ大音量で音楽を聴きます。楽曲は、音域と強弱が広いジャズとクラシックを中心にしています。最初の頃は合計10万円もかけたとは思えないくらい中音域の引っ込んだ音でしたが、20時間程過ぎたあたりから中音域がフラットになってきて、それと反して低音がちょっと足りないかなという印象になりました。これも30時間過ぎたあたりから低音が出るようになり、ドラムなど非常に軽い感じで窓ガラスを揺すっています。
音色的には落ち着いた音ですが、店長はFE206のキラキラした前面に出てくるタイプの音のほうが好きかもしれません。もう一組作って試してみようかと思いますが、お小遣いが足りないかも。
そうだ、今回高域用のツイータを使っていません。このフルレンジのシステムを使うと、自然な音声が非常に魅力的に聞こえますし何しろ定位がすごくいいです。いつぞやの小型キャビネットの製作記でも同じことを書いていますが、特にジャズのセッションでは定位が非常に重要な要素だと店長勝手に思っています。
では、今回のバックロードホーンスピーカーキャビネットの製作記は終わりです。とにかく作ってみないとわからないことが多いので面白いです。