第十九回 健康作りとスポーツ

「病気」の補助療法に
勝敗に関係なく楽しむこと


 今年の北海道は例年より冬将軍の到来が早かった。このところ降り積もった雪はこのまま根雪になりそうで、ウインタースポーツの愛好家たちは、待ってましたとばかりに野に山に繰り出している。
 小生も何年か前から、オホーツク85キロ・クロスカントリー・スキー大会に出場して、健康維持の一助としている。毎年2月下旬の大会当日は、朝7時半にスタートし、8時間以上かけて85キロの起伏の多いコースを走破する、ややマゾヒスティックな競技だが、この大会に向けて毎日少しずつ練習して汗を流すのが実に気持ちが良く、体力維持にも役立っていると感じられる。

 肉体を動かすことによって心身が活性化することは確かで、気分高揚作用を有する脳内ホルモンの分泌が促進されて、精神的にプラスの効果があることも知られている。
 また、規則的な歩行習慣に心臓発作を予防する効果があることも医学的データが示している。
 最近はアクア・ウエルネスとか名付けて、水中の運動を高齢者の足腰の運動機能増進に役立てる試みが盛んになりつつあるようだ。例えば両膝に水が溜まり、痛くて歩行が困難になる加齢疾患に変形性膝関節症というのがあるが、水の中だと浮力が働いて比較的楽に歩ける。この水中歩行訓練を継続的に続けることにより、体重削減の相乗効果もあって、膝関節の疼痛は相当程度軽減されてくる。

 公共のプールでも最近は泳ぐことだけを目的とせず、このような水中リハビリのためのスペースを広げるところが多くなっているという。
薬や注射、あるいは手術的治療だけに頼らず、このように自ら積極的に身体を動かすことで病気を克服するという意欲も大切だ。このような水中 の歩行運動も広義のスポーツ活動に含めて考えると、スポーツは種々の病気の補助療法として大きな可能性を秘めていると言える。

(イラスト:Yurie Okada)

 しかし一方、スポーツ障害といわれる多くの病態がスポーツ医学の分野で取り上げられ、過度のスポーツ活動に対する警告がなされているのも事実だ。先日、ある中学校のスポーツ指導をしていた教師が、選手生徒の顎を蹴り上げて怪我をさせたと新聞が報じていたが、試合が近づいてつい指導がきつくなってしまったとのこと。
 成長期の子供たちには多様な身体活動をさせて敏捷性を養うことが大切で、それこそ、この時期のスポーツの主な目的であるべきだが、現実にはある特定のスポーツに専念し、対外試合の勝敗にこだわりすぎるきらいがある。それも大人たちの自己満足のために過度の練習を強いていることが多く、健康作りのためのスポーツということを考えると、本末転倒だ。

 成長期と老年期においては、スポーツとの取り組み方が健康に影響する度合はことさら大きい。人生80年の時代を健康に生き抜くための体力作りに、勝敗にこだわらず自分に合ったスポーツに親しむことをお勧めしたい。スポーツと言うには語弊があるかも知れないが、週1回のフォークダンスで楽しみながら運動不足を解消するなんて言うのも、なかなかいいですね…。

    【関西ジャーナル
2001年1月1日号掲載
  

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