平成15年の干支 「癸未」について

構造改革へ揆を一にして実現を
 平成15年の干支は癸未である。癸は、音は「キ」、訓は「みずのと」である。未は音「ビ」、訓読みは「ひつじ」、動物の羊である。癸未は音「キビ」、訓読み「みずのと・ひつじ」である。俗に「ひつじ年」と呼ばれる。
 干支の意味するところから、平成15年がいかなる年であるかを考えてみたい。
――― 河西善三郎 関西師友協会理事 ―――


筋の通った計画を立て、そのことに当たる者が
一致協力して実行していく年

■『癸』について

 癸は十干の最後に位置する。五行(木火土金水)で言うと水にあたり、水の兄が壬(みずのえ)で、弟が癸である。許慎の『説文解字』には、「水四方より流れて地中に入るの形に象る」とし、「冬時、水土平らかにして、揆度すべきなり」と説明している。
 五行では木は春、火は夏、金は秋、水は冬にあたる。冬期、林の木樹は葉を落とし見渡し易い。水も土中に入って、林の中の計測はしやすくなる。揆度とは、はかる、計測するという意味である。魏の張揖の著した、『廣雅』という辞書の釈言篇に「癸は揆なり」とあり、『史記』の律書篇にも「癸は揆なりで万物は揆度することが出来るという意味だ」とある。
 癸には測るという意味があり、揆策(計画)・百揆(もろもろの計画)・首揆(国の計画を主宰する首相)等の熟語がある。揆一とは天下を治める道が同一であるという意味で、『孟子』に、「先聖後聖その揆一なり」の語がある。また後漢の班超の『王命論』に、「天に応じ、民に順うに至ればその揆一なり」とある。応天順民の政治が行なわれるならば、民心が一つに纏まって、政道も一途出るという意であろう。
 しかし、天意に逆らい、民心に反する政治を行って民衆が苦しむ時は民衆が団結・反抗するのが一揆である。一向一揆・百姓一揆の語のある所以である。
 以上によって見れば、癸には、はかる(測る・図る・計画する・道・法則)という意味があることが分かる。なお、癸の最も古い、甲骨文字の形は「」で、或る学者は道具の一種と見、或る学者は兵器の一種と見ている。

■『未』について

 未は十二支の第8番目で方角は西南、月は陰暦の6月、時刻は午後2時を指す。未の甲骨文字の形は「」で、白川静博士の『字通』によると「木の枝葉の茂りゆく形」と解してとられる。『説文解字』にも、「未は昧なり。六月の滋昧なり。五行、木は未に老ゆ、木の枝葉を重ぬるに象(かた)どるなり」とある。
 未は木の上に一を重ねた形で、陰暦6月は晩夏で、木の枝葉が繁茂して暗くなる。昧は暗いという字で、未は昧に通じ木が茂りすぎると、木の五衰と言って、風通しが悪くなり虫が付く、木が弱って成長が止まる、これを、梢(うら)どまりと言う。すると裾上がり・根上がりとなって、木の生命力が無くなり、梢枯れ始め、終に木の天辺(てっぺん)から枯れて来る。
 そうならないために剪定を行い木の風通しを良くし、日光が良く当たり明るくなるようにせねばならない。昧を不昧に持っていくのである。未年、羊の年は茂った木のように繁雑で暗い年である。だから不要な物事を省き、大切で重要な物事を残して行く年である。


煩雑で不要な物事を省き
明るさを取り戻す年

■平成15年 癸未の年はどうあるべきか

 癸は揆て、はかる、という意味がある。測定、図る、計画等に通じる。大きく言えば、国の政治・経済・外交・福祉・環境保全等の施策を立案し、未が意味するように、煩雑で不要な物事をば、思いきって省き、国政上の風通しを良くし、明るさを取り戻すことである。特に平成14年は、今まで暗い関係にあった北朝鮮との間に国交交渉の基礎が築かれ、極東アジアの平和の上に明るさをもたらされようとしたが、拉致問題を巡って交渉が停滞しているのは残念なことである。
 平成15年は、更にその関係が前進することが期待される。小泉首相の言われる「改革なくして経済の再生無し」という言葉も、閣内の協力一致は勿論、自民党全体が揆を一にして協調していく姿勢がなければ目的の達成は難しいのではないか。
 なお、平成15年は滅びつつある地球環境を救う為に全世界が揆を一にすべき年である事も銘記すべきである。
※参照 石弘之著『地球環境報告』(岩波書店)

■前回の癸未の年は昭和18年
 前回の癸未の年は昭和18年である。米英との太平洋戦争は酣(たけなわ)であったが、1月、ガダルカナル島では25,000人の戦死者・餓死者を残し、撤退。4月18日、山本五十六連合艦隊司令長官戦死、5月29日、アッツ島守備隊全滅等々、戦局は日増しに悪くなる状況であった。国家の前途は昧(暗)かったのである。
 しかし政府ならびに軍部はなお強気で、戦時行政特例法・戦時行政特権令等の法律を施行し、首相の権限を強化し、国民の士気を高め、揆を一にして敗戦への坂道を転がっていったのであった。

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